Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lesen Sie 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.496 Zeichen · 368 Bildschirme
さりとて決してこの女を、民弥は嫌っているのではなかった。いやむしろ好いていた。とはいえどうにもこの女の素姓と、その行動とが不可解だったので、気味悪く思う感情の方が、一番彼には多かった。
今も現にこの女が云ったように、京都へも行けば大坂へも行き、紀州へも行けば江戸にも来ている。日本国中この女は、どこへでも出かけて行くらしい。
そうして行った先の上流、中流、最下等から最上流の、あらゆる人間に知己があって、交わりを結んでいることなども、民弥には気味が悪かった。
派手で目立って金使いが荒くて、どこででも評判の女となる。――このことも民弥には気味悪いのであった。
秘密を持って秘密の仕事に、従事している危険な女!
そんな女のように思われるのであった。
二人の立って話している、大通りにあたっていた夕暮れの光が、そろそろ消えて行こうとしていた。
民弥と梶子との立ち話を、家の蔭にかくれて眺めている、刃三十郎の眼の中に、殺気と恐怖の色のあるのは、いったいどうしたというのだろう。
(ありゃア松浦勘解由の忰だ。わずかの意趣から太秦の野道で、その勘解由を討って取り、爾来自分でも世を狭めていたが、こんな江戸の地でその勘解由の忰の、民弥に逢おうとは思わなかった)