Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこののみとりぶし
猫の蚤とり武士
国枝 史郎
Lesen Sie 猫の蚤とり武士 (ねこののみとりぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 185.496 Zeichen · 368 Bildschirme
英雄の心事
英雄の心事
歩きながら松浦民弥は、梶子のことを考えていた。
洞窟での一度のくちづけ!
でもそれは烈しい恋であった。
永い間彼女に恋されて、自分でも憎からず思っていたが、いろいろの事情に遮ぎられて、どうすることも出来なかったのに、あのように死に直面して、恋の証拠をあらわしてしまった。
だから今は民弥は梶子に対して、燃えるような愛着を持っていた。
(その梶子殿はどうしたことか、和歌山のお城へはいったきりで、その後まるで消息がない)
もちろんあれほどの女であるから、不測の災いを受けるというような、そんな事はあるまいとは思われるものの、やはり心にかかってならなかった。
やがて城下も出はずれて、街道の松並木が見えて来た。
この夜和歌山のお城の一室、善美をつくした結構なお部屋で――姉小路卿と梶子とが、長閑に漫然と話していた。
「すべて蜜柑の生る土地は、気候温暖で住みよいというが、この和歌山など、よい例でござるよ」
トボケたような例の口調で、姉小路卿はそう云って、
「梶子殿などこういう土地に、恋人か何かと家を持たれ、静かに住むようされた方が、かえって幸福ではあるまいかな、……今のお仕事もよろしいが、才女で若くて美しい身を、危険にばかりさらしているのは、あまり感心したことではござらぬ」