Japanische Klassiker mit Furigana
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ねこまち
猫町 他十七篇
萩原 朔太郎
Lesen Sie 猫町 他十七篇 (ねこまち) von 萩原 朔太郎 (はぎわらさくたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.483 Zeichen · 58 Bildschirme
金鵄勲章功七級、玄武門の勇士ともあろう者が、壮士役者に身をもち崩して、この有様は何事だろう。
次第に重吉は荒んで行った。賭博をして、とうとう金鵄勲章を取りあげられた。それから人力俥夫になり、馬丁になり、しまいにルンペンにまで零落した。浅草公園の隅のベンチが、老いて零落した彼にとっての、平和な楽しい休息所だった。或る麗らかな天気の日に、秋の高い青空を眺めながら、遠い昔の夢を思い出した。その夢の記憶の中で、彼は支那人と賭博をしていた。支那人はみんな兵隊だった。どれも辮髪を背中にたれ、赤い珊瑚玉のついた帽子を被り、長い煙管を口にくわえて、悲しそうな顔をしながら、地上に円くうずくまっていた。戦争の気配もないのに、大砲の音が遠くで聴え、城壁の周囲に立てた支那の旗が、青や赤の総をびらびらさせて、青竜刀の列と一所に、無限に沢山連なっていた。どこからともなく、空の日影がさして来て、宇宙が恐ろしくひっそりしていた。
長い、長い時間の間、重吉は支那兵と賭博をしていた。黙って、何も言わず、無言に地べたに坐りこんで……。それからまた、ずっと長い時間がたった……。目が醒めた時、重吉はまだベンチにいた。