Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷
岡本 綺堂
Lesen Sie 番町皿屋敷 (ばんちょうさらやしき) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.494 Zeichen · 67 Bildschirme
時鳥の鳴く卯月が来て、衣更えの肌は軽くなったが、お菊の心は少しも軽くならなかった。月が替ってから播磨は再び渋川の屋敷へ呼ばれた。
「小石川の御屋敷へたびたびの御招きは何の御用でござりましょう」
お菊はそれとなしに十太夫にきくと、無頓着の用人も頭を傾けた。
「おれには判らぬ。いつものお叱言か、それとも奥方でも呼ばれる御相談か。大方そんなことであろうよ」
「奥様をお呼びなされましょうか」
「殿様ももう二十五、そんなことがないともいわれぬ」
「殿様がじかにそう仰せられましたか」
「いや、何にも聞かぬ」
用人でも若党でも奴でも、この屋敷の者は誰も初めから女のことなどを問題にしていない。奥様が来ようが来まいが、どうでも構わぬと澄ましているので、お菊は誰を相手にしてもこの問題の成行きを探り出すことは出来なかった。彼女は一人でいらいらしていた。色恋に対してそういう無頓着な人間ばかりが揃っているのは、主人と自分との秘密をつつむには都合が好かったが、なまじいに今までその秘密を包みおおせて来ただけに、この場合になってお菊は自分の味方を見付けることも出来なかった。女同士のお仙も相談相手にはならなかった。