Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しろくれない

白くれない

夢野 久作

Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

人間万事あとかたも無きものとこそ思ひ悟りて、腕にまかせ、心に任せて思はぬ快楽を重ね来りしわれなりしか。その行末の楽しみの相手なりし者を討ち果したらむ今は、わが身に添ひたる、もろ/\の大千世界を打ち消して涯てしも無き虚空に、さまよひ出でし心地しつ。明日よりは何を張合に生きむと思へば、世にも哀れなるわが姿の、今更のやうに面影に立つさへ可笑し。

やよ鬼三郎よ。明日より何方へ行かむとするぞ。汝が魂、何処にか在る。今までの生涯は夢なりしか。現なりしか。まこと人の心に神も仏も無きものか。人の怨み、わが身の罪業を思ひ知りて神仏の御手に縋らむと思はずや。天地の大を以て見れば、さしも強豪、無敵の鬼三郎も多寡の知れたる一匹の蛆虫。何処より蠢めき来り。何処へ蠢めき去らむとするぞ。やよ鬼三郎。何処へ行くぞと。大声にて叫ぶ声、われとわが耳に入りて夢醒むれば、何時の間にかまどろみけむ。夜は白々と明け離れて、向山の杉の梢に鴉の啼く声頻り也。

われは、それより力無く起き上り、本堂下の窖に入りて、男女の屍体を数段に斬り刻み、裏山の雑木林の彼処此処に埋め終りつ。さて残りたる米を粥に作りて何の味ひも無く腹を満たし、梅干、塩、味噌なぞを嘗めながら、日もすがら為す事も無く方丈に閉て籠もり、前の和尚の使ひ残したる罫紙を綴ぢ、今までの事を斯様に書き