Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
まさしく罪悪が行われていた。
芹沢の郷の海岸に、不思議な建物が立っていた。
その中で行われていたのである。
その建物の珍奇なことは!
三十
海に臨んで造られた館は、一口に云えば唐風であった。幾棟かに別れているらしい。鶴の翼を想わせるような、勾配の劇しい瓦屋根が、月光に薄白く光っている。しかし館は土塀に囲まれ、その上森のように鬱々とした、庭木にこんもり取り巻かれているので、仔細に見ることは出来なかった。
館の一方は海である。岸へ波が打ち上げている。白衣の修験者でも躍るように、穂頭が白々と光っている。館の三方は曠野である。木立や丘や沼や岩が、月光に濡れて静もっている。遙か離れて人家がある。みすぼらしい芹沢の里である。
と、その時里の方から、一挺の駕籠が走って来た。二、三人の武士が守っている。館の方へ走って来る。
その裏門まで来た時である、内と外とで二声三声、問答をする声がした。
と、門が音なく開き、音なく駕籠が辷り込んだ。
後に残ったは月ばかりである。蠢めくものの影さえない。館からも何んの物音もない。沼で寝とぼけた水鳥が、ひとしきり羽音をバタバタと立てたが、すぐにそれも静まってしまった。