Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「いやですっ」
と、高氏は駄々っ子のようにかぶりを振った。
「そんなことなら、ここで母上におすがりはしません。さいぜん母上は何と仰せられましたか」
「……この母が」
「ええ。――母はあなたを信じている、と仰っしゃった。そのただ御一言こそ、どんなに、高氏にはありがたかったかしれません。いや、母上もこの子を、やっと一人前の大人に見て下すったかと、うれしかったのです。……しかるになぜその子を信じては下さいませぬか」
「…………」
「第一、私には、わが足利家の内に、そんな魔の咒符みたいな暗い物があるということだけでも我慢がなりません。母上は秘密がお好きなのですか」
「ま。憎ていな」
「おゆるし下さい……」と、急に身を小さく、子の姿にして。
「じつの所、高氏は癇が立っておりまする。家来どもには、木像のごとく押し黙って見せておりましたが、二年余の忍辱と堪忍が、つい母上には甘えて、せきを切ってしまうのでござりまする」
「……わかりました」
「お分り下さいますか」
「高氏どの。あすの暁、鑁阿寺へ来て、お待ちなさい。いつものよう暗いうちに、母も朝詣でにまいりますから」
「では、その時に」