Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
時の若鷹
槍、刀、馬の鞍など、白河ノ関からこっちでさえ、去年の三倍にも値が刎ね上がッている」
と、ひとり力んだ証言をしていた。
「ほう。……では、蝦夷の空は戦かいな」
群集、多くの顔は、うららかに聞いていた。
もう源平争覇の社会を眼に見た人間は地上にいない。蒙古襲来の国難なども、老人の炉辺話でしかなかったのである。四十年の無事泰平は、誰からも、全く過去の悪夢を忘れさせていた。
やがて主従は、ゆうべの船宿の一室にいた。又太郎は風聞の仔細を語った上で。
「……が喃、右馬介。足利の地にとっては、こりゃ対岸の火災とは見ておれまいぞ。乱が大きくなれば、必定、鎌倉幕府からわが家へも、出兵の令が降るであろうし、なおまた……」
ここまで言いかけると、彼はその地蔵あばたの頬を、笑み割れそうにほころばせた。
「知らぬか。――“一雲を見て凶天を知る”という言葉もあるのを」
時の若鷹
難波の旅寝をその夜かぎりとして、次の日の主従はもう京へのぼる淀川舟の上だった。
「いい川だなあ、淀川は」
舟べりに肱をもたせて、又太郎はうつつなげな詠嘆を独り洩らしていた。
「――わしの性分か。わしは大河のこの悠久な趣が妙に好ましい。