Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「おっ……」
燭を切る。
下に繰り展べた血書の一字一字へ、彼の眼は食いつくようにかがやいた。
弘安十年二月二十一日
ゆゑあればこそ、ここに書きおくなれ。さあれ、世には告げてよ。
われ、狂ひ死にせりと。
不肖家時、清和の嫡流に生まるといへど、かなしいかな、徳なく才とぼしく、家祖の遺託に応ふるあたはずして、苦計むなしくやぶれ、かへつて、家統も危きを見、わづかに家名の絶えを支へんため、ここに一切を闇に附し、一身を屠腹して、子孫に詫ぶ。
そもそも是、家時が宿命なるか。
すでに、家の遠祖の人、置文して、後代のわれに言へり。「七代の孫、かならず天下をとり、時の悪政を正し、また大いに家名をかがやかさん」と。
すなはち、家時はその七代の孫にあたれり。しかも、家門は世々衰微をたどるのみか、北条が悪政は、いよいよ民をくるしめ、朝を悩ましたてまつる。
家時、凡庸なりといへ、いかで祖廟の垂言に報ふなく、生を偸んで晏如たりえん。
ひそかに、青雲を思ふや多年。土倉に弓箭は満ち、山沢に健児は待つ。然れども、その日を見ず、いま、事あらはれて、鎌倉沙汰の軍士、検非違のため、この地に殺到あるべし、と聞ゆ。