Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「……御書状を、おとどけ申しあげる先のお人とは、そも、どなた様でござりますな」
「河内国金剛山の西、水分山のほとりに住む、楠木多聞兵衛正成と申す者」
菊王は、鸚鵡返しに。
「楠木多聞兵衛正成どのと申されますか」
「そうだ」
俊基は初めて、手の書状を、彼にあずけた。そして、もいちど、ことばをあらためた。
「ゆめ、人目にかかるなよ。楠木が屋形を訪うにも、途々、うかと人に道など訊いてはならぬ。ああこれで、一期に頼みおくことも、安堵した。これでよし。菊王、つかの間でも、寝むがいい」
「おあるじにも、どうぞ御安心あって」
「む、頼うだぞ」
ふっと、燭は吹き消された。けれどまもなく、遠くの鶏鳴と、蔀明かりに、待たぬ晨が、白々と近づいていた。
物見だかい京の庶民は、その朝まだき、六波羅兵に取り囲まれて行く日野俊基の乗物を、辻々で不安そうに見送っていた。
輿でなく、牛車だった。
そのうえ護送の列は、すぐ東海道へは下らず、六波羅の内へ入ってしまった。
なお、これにつづいて。
べつにもう一組の護送兵が、二条辺から一輛の牛車を押ッ包んで来て、それをも六波羅の一門へ追込んだ。
「……後のは、参議殿じゃった」