Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
すると彼方から、辺りを払うような大名の一列が、夕陽を負って近づいて来た。――馬上、華奢な羅張りの笠に、銀波を裾に見せた紗の袖なし羽織という装いの佐々木道誉が、高氏を見て、遠くからほほ笑みかけていた。
「や。高氏どのか」
道誉は、何と思ったか、われから先に駒を下りて、愛想よくこう話しかけた。
「つねに近江と鎌倉の間を往き来しておるため、ついお目にかかる折もなかったが、はからずも、よい所で」
彼が下馬したのを見ては、高氏も鞍を下りないわけにゆかなかった。またその愛想笑いにたいして、ニベもない宿意を以て報うほど小心にして正直な彼でもなかった。
「お。いつもお変りのうて」
「何さ、何さ」
道誉は、胸の前で、サラリと唐扇を開いて、ばさらな扇使いに、伽羅と汗の香を放ちながら、
「去年。其許も御存知の土岐左近めが、公卿の謀みに乗って、六波羅の討手をうけ、あのような馬鹿な最期をとげたため、この方までが、とんだ飛ばッちりをうけるところでおざったよ。……がようやく、事も落着を見、俊基朝臣も赦免となられたので、身の疑いもまず晴れたが、いやお互い災難は、どこにあるか知れぬものでな」