Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
体じゅうで笑い出すと、直義も急に、くすぐッたそうな声をあげて。
「ハハハハ。……あ、兄者人。……兄者人は、おひとがわるい。私をからかっているんだな」
「いや、本気だ本気だ。もっと怒れ。怒らないのか、直義」
「怒れない」
一そう、兄のふところ深くへ、その顔を突っ込みながら、直義は泣き出しそうな声で言った。
「たとえ、どうなっても、直義は兄者人の弟です。怒ってみても始まらない」
「そうだ。かつて、わしが蟄居の日にも、警固の垣を窺って、生命がけで幽所の兄に近づこうとしてくれたこともあったな。……ああやはり弟よと思われて、あのとき、口に出さねど、うれしかった」
「そんなこと。……それよりも兄者人には、きっと、べつに本心があるのでしょう。それを明かして下さい。この弟を、弟と信じて下さるなら」
「さほどまでにか」
高氏は、寝たまま、また、弟の襟もとをつかんだまま、恐いような顔を示して。
「では、いうぞ」
「お胸の底、打割って下さいますか」
「置文に誓うた心は、今日とて、少しも変っていない。たとえ、北条一族の姻戚に列しようと、赤橋の妹を妻に持とうと、なんで初志を変えようぞ。むしろ、鎌倉御家人どもの眼をあざむくにも、徐々に大事を計ってゆくにも、よい階段とすら思うている」