Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

「覚一。なにをいうの」

草心尼は、ひしと抱きよせて。

「……まだ遊びざかりのそなた。その上、眼さえ不自由なのに、日頃の母のことばも、よう聞きわけて給もるわいの。いかに、修業の道だからとて、そんなにまで、われと我が身を酷う持って、自分で叱ることはないぞえ」

いつもなら、覚一とても、図にのッて、母の暖い香に、そのまま甘えているだろうに、なぜかこよいの彼は、その膝をもじもじ去って、両手をつかえた。

「おねがいです。お母あさま、もいちど覚一を、都へやって下さいませ」

「……え?」

草心尼は、かたく自信していた母の懐に、ふと、水瓶のヒビでも見たときのような不安と淋しさを抱かせられて、子の姿を見まもった。

「……ど、どうして」

「もっと、琵琶の修業をつみ、おなじ一生の道とするなら、その道を究めるところまでやりたいのです」

「そしたら、なにも母のそば離れて、遠い都へ出ないでも、そなたに教えて給もるお師が、この鎌倉にないこともあるまいに」

「いえ、鎌倉には、良い師はあるまいと、人も言いますし、ここは長く住む地でもありません。今にきっと、恐ろしい修羅の地に変りましょう」

「そなた……妙なことを、お言いやる。