Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
降りる者も見えたのに、後客のうちには、やっと身を立ち支えている者もある。
終日の舟行なので、退屈もむりはないが、舟の中ほどで、博奕が始まっていたからである。たしか花街の神崎あたりで、どやどや割りこんで来た今時風な若雑人の一と組なのだ。初めのほどは、酒を酌みつつ、わざとらしい猥談を放って、女客が顔赤らめるのを興がッていた程度だったが、やがてのこと博奕道具を取出すと、ことば巧みに、そこらの乗客を鴨に引きこんで、銭の音やら雑言のやりとりに、眼いろを変えだしたものだった。
その手練やら軽妙な諧謔などに、つくづく感じ入ったように、又太郎は。
「右馬介、思い出すなあ。あの連中を見ておると」
「何をですか」
「それ。いつぞや七条河原の田楽舞の掛け小屋へ入った折、人気者の花夜叉とかいう田楽役者が唄った唄の一と節を……」
「ははあ、花夜叉のあれですか」
右馬介も思いうかべた。その節までも覚えている。眼に、若雑たちの傍若無人ぶりを眺め、胸では、それをつぶやいてみた。
わが子は二十に成りぬらん
博奕してこそ歩くなれ
国々の博徒に。
さすが子なれば
憎からじ
見捨て給ふな
王子ノ住吉、西ノ宮