Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
と、母子を導いて、妙厳寺の一房へ入った。
旅の夜々にも、やや馴れて来た。時には、借る宿もなく、木蔭に油単を敷いて、更着を被いでしのぐ晩もあり、木賃の破れ屋根の穴に星を見つつ臥す晩もあるが、寺院は最良な旅籠だった。寺に寝る夜は、しんから疲れを休めて眠れる気がした。もちろん、いつどんな場合でも、従者の三名は、遠くにやすんだ。
その夜の、夜半ごろである。
御厨ノ伝次は、ふと、木枕から首をもたげて、
「ははあ、また出かけたな。さもしい奴ら」
藤五と八郎太の、もぬけの殻の寝床に気づいて、にがり切った。
これまでの駅路でも、何度となく、おなじ例があったのだ。女を買いにゆくのか、酒だけにつられて出るのか。
伝次とて、武家奉公の身だ、主家での窮屈さは知っている。それから解放された旅空では、日ごろの渇きが、あさましく疼き出てくるのは、彼も同様だった。しかし、そこに自制と廉恥をもつのが、匹夫下郎とちがう武士ではないかと、彼のみは反撥していた。
「下郎根性。この数日は、お供するにも誠意は見えず、ぜひなく盲と尼御前に付いているといった風だ。……よし、いちど、とっちめておいてやろうか」