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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme

Aozora Bunko

「……ても、埒のない輩でございますな。わが子はどこにと、空飛ぶ鳥を見ても案じている親どももありましょうに」

すると。――よくよくそれまでは、怺えていたものの発憤だったとみえる。とつぜん、どこかで、

「止めろッ、若雑ども」

と、舟脚もぎくとするような声で呶鳴った人がある。

「なにっ」

無頼な眼つきが一せいに後ろを向いた。

ちょっとの間、その一喝は、どの顔が発したものかわからなかった。しかし、さっきから漢書に親しんでいた野駈け姿の若公卿が、ふと、書物から顔を離して、うしろの小冠者へ物をいう風なので、さてはと、舟中の視線はそこへそそがれた。

「これッ、菊王、他人のすなる博奕ごとなどへ、なぜ要らざることを申すか。ばかな奴よ。黙っていませい」

きっと、眉にも怒りをみせて叱りつけると、その人はまた、宋版の漢書へ眼を落して、何もなかったような姿である。

頭巾の上に、笠をもかぶっているので、よくは分らないが三十にはとどくまい。端正な姿に細太刀もよく似合って、こんな淀川舟の中では、鶏群中の一鶴といえる気品もあらそえない。

「はいっ」

菊王なる侍童には、怖らく不満なのだろう。