Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
「覚一」
「お母あさま」
「……どうしようぞ」
ふたりは、こう呼び合ったきりだった。死所は一つにと、もう誓うように、覚一は母の手をさがす……。
女は、眼をそらした。自分も母でもあり、脾弱い子が一人あるといっていたのも本当であろう。その眼には、涙があった。
「ご心配なさいますな」
彼女はまた、早くちに。
「気懸りは、今夜だけのこと。……朝ともなれば、私にもよい思案がありまする。……今日は、ぜひなくお別れいたしますが」
「待って下さい。いま御思案と仰っしゃったのは?」
「ここから山越え六里の南、一色村へ立ち帰れば、土地の侍が、沢山います。しかも、その侍たちはみな、足利高氏さまを宗家と仰ぐ人たちですから」
「えっ。では幡豆、一色、今川党などの住む所とは、その辺りでしたか」
「足利家に御縁の深そうなお二た方が、途中、云々の御難儀と告げわたれば、すぐ大勢して、押ッ取り刀でお守りに駈けつけましょう。……が、お名をお聞きしておかねば、合点もしてくれますまい。おさしつかえなくば、伺わせて下さいませ」
「上杉殿の身寄りの端、一子覚一と、草心尼とお告げして給われば。……そして、あなた様は」