Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(一) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 246.214 Zeichen · 495 Bildschirme
それのみならず、余裕綽々な八荒坊は、息のあい間に、こうもいった。
「やい、船木頼春。うぬも名だたる六波羅のお尋ね人。多年探しあぐねていたところを、よくもわれから姿を現わして来おッたな。こっちから礼をいわずばなるまいて。したが、礼は六波羅の白洲でいおう。そして日野俊基も、一つ白洲で会わせてやる。主思いの菊王も、ありがたくお縄をいただいて、好きな主の側へ行くがいい」
八荒坊の大言は、残念ながらけれんではない。菊王も頼春も、その舌さきの一撃だけで、驚愕の下に、戦意までも打ち挫がれた形だった。
「さては、裏を掻かれたか」
二人とも生色はない。
思うツボとしていた結果が、逆に、釣られていたのは、まさにこッちだったのだ。
なにもかも、こちらの計は見抜いていながら、あたかも釣られたような振りをして来た八荒坊だったのかと、いまさら知って、頼春の太刀も、菊王の切っ先も、
「何をこの放免一人ぐらい」
と、心では叱してみるものの、どうしようもない顫えを白い刀身に刻むだけで、いつまで斬ッてかかれなかった。
「はははは」
大人が子供の棒キレを見るように、八荒坊はなお言った。
「放免は放免でも、おれをただの諜者の下ッ端と見くびっていたのが、そもそもそッちの落度だったのだろう。