Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
それをなぜか、大覚ノ宮も、父の重明までが、
「真っとうな武人、力にもなる人物」
としているのが、五郎には元々からふしぎだった。裏切りの惧れなどはない者だろうが、今夜のようなばあいには、じつにまどろい、およそ非武人的なただの朴とつ漢にみえる。
「おう、細作の者が、戻って来たらしい」
ふと、高徳が呟いた。
その黒い人影は、庭木戸からこれへ入って来たのである。主人のほかな人影が室に見えたためか、男は、くつぬぎの辺に、だまって蟇のような姿をして、うずくまったきりであったが、やがて高徳から、
「して、どうだった。飽浦八浜の動静は?」
と訊かれ、その俊敏そうな隼の眼を、初めて額ごしにキラつかせながら、えて来た情報を、次のごとく報告しだした。
飽浦、八浜、妹尾あたりに分れている備前佐々木党が、がぜん結束をみせて、
「すわ」
と、色めきを見せたのは、決して、今夜のこちらの機密が洩れたがためではなく、もう五、六日も前からの動きであった。
と、断定できる理由には、次のごとき事実がある。
佐々木道誉の一家臣、田子大弥太という者が、さきごろ輦輿に先だって、加治源太左衛門安綱のもとへ、道誉の密使として、着いている。