Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
それが暗い翳とならず、今朝の冗談にさえなっていたのは、尊氏の心の作為か、この主君の天性か、どっちかだろうと師直は思った。と同時に、彼は思いきって膝をすすめ、尊氏のすぐ顔の下でその声を押しころしていた。
「殿。……病む歯は抜くにかぎります。殿も毛抜きをお用いなされませ」
「わしの病む歯は、どこの歯か分っているか」
「もとよりあの御方です。大塔ノ宮という一歯をのぞけば、そこらじゅうの得態の知れぬ腫熱もみな自然に解消するでしょう。いずれにいたせ、ご大望のためには、放置してはおかれませぬ」
「だが、先は宮なのだ。武門の列の者とはちがう。わけてうしろには主上がおられる。その主上もご同腹と考えられる。いやむしろ宮をしてやらせておられるのかもしれぬ」
「でも、策を以てすれば」
「どういう策をな?」
「ここに手頃な毛抜きがありまする。それは准后の三位ノ廉子さまです。あの女御をつかうに限りましょう」
この男の短所長所、アクのつよさしぶとさなども、尊氏は主人である、百も承知のうえで執事の重職に用いていた。
が、なおかつ、いまの師直の一言には尊氏もおもわず生唾をのんだらしい。じっとそのおもてを睨まえるように見て。