Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「おう、わいらはな」
と、言いだした。
「わいらには、ひまくれる。ここから勝手に故郷へ帰れ」
「へ? おあるじは」
「おれが身は、しさいあって、仮に坊主となって山入りするから、当ぶん世間へは顔もみせまい。三、四年がほどは国元へも立ちよらぬと、わが家の家族につたえてくれい」
「ど、どうしてです」
「わけはあとで知れよう。だがの、やがて足利殿の天下になるは知れたこと。そのあかつきには、おれは大名になる。お取立てをうけるのだ。わいらにもいい目をみせるぞ。故郷の家族をたのんでおくぞよ」
彼はついに郎党たちともここで別れた。たって追いやってしまったのである。宮の牢御所へちかづくには、そしてあとの身仕舞いにも、いっそ一人がよいと考えたものらしい。
つまりは彼として身を巌頭においたもので、強いて盲目な勇に自己を駆るべくむしろ孤独を必要としたのだろう。淵辺伊賀守義博という四十男は、こうして大塔ノ宮刺殺の腹じたくをまずは作った。腰の太刀は関か、備前ものか。いちど抜いて、刃をしらべ、さいごの酒の一碗を飲みほすと、やおら、のっそりのっそり歩きだした。――二階堂薬師ヶ谷の牢御所のほうへである。