Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「いっそ、この一堂を一蓮の台となして」
「いざ、いさぎよく」
声から声へ、次々に、自身の刃でうッ伏していたのであった。また互いに刺し交がえ、あるいは、なにか天へむかって怒るようにどなったせつなに、立ち腹切って、朽木のようにどうと仆れる者もあった。また母や妻子の名を心に呼びつつ、ふるさとの方をのぞみながら、のどへ刃をつき立てて伏す兵もあった。
みるみる、一向堂のまわりは、血のうみをなし、越後守仲時以下、糟谷三郎宗秋そのほか都合四百三十二人ことごとく、枕をならべて、自害してしまったのだ。
むざんである。過去の歴史とはみても、胸がいたむ。何とか生きようもあったろうにと、その一途な集団死を、理性で問うのは、後世の、そして平和時の、幸福なるあげつらいというものであろう。乱世下に掻き立てられる生命の灯とは、自分自身ですら、戦ぎの中のまたたきを、こんなにもふと断ちやすく、持ちきれなくもするのであった。わけて、もののふという者のあわれは、そこに死すことを死に花とすらしようとする。
それにしても、四百余人の集団死とは、あまりに酸鼻もはなはだしい。あるいは、これも古典常套の誇張でないかとの疑問もおこるが、しかしこれには疑いえない史証もある。