Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

「もうもう、夫婦心中をしようなどと、弱い心はお互いに抱きますまい。卯木も病気に負けますまい」

「おお、わしとて、武門嫌いの性が、世をせばめて、わざわざ、自分をこんな弱い者にしているが、自身の好きな道へ向えば、どんなことでもできるつもりじゃ。……わけて、わしのために、主家も郷家も失わせたそなたを、その女一人ぐらいを、倖せにしてやることもできないでは、男として恥かしいわえ」

「そんなこと。もう、仰っしゃらないで……。恋は、どっちの罪でもありませぬ。恋が罪だなどとも思いませぬ。これが二人の求めた恋なのではございませんか」

「よういうた。元々わしたちは、何も、武門の出世や、殿上の真似びを、あこがれているのではない。どんな苦労をしても、そなたと暮せればという願いだけなのだ。……だがなア、そのためには」

「あなたは、御養家を勘当されて、都にもいられなくなりましたし」

「そなたもなあ」

雨露次はまたつい、沁んみりした。男の自分がなした犠牲は覚悟の前としても、女の一生を大きくかえた自責は自責として始終胸に問われていた。それを洩らすと首をふる卯木がいつも、いじらしかった。

赤子のなきがらは、その夜、堂守の妙達と、父の手で、そっと、藤井寺の裏で、荼毘(火葬)に付された。