Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちくはくき

竹柏記

山本 周五郎

Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme

Aozora Bunko

きっとわかって下さるに違いない、今日こそ、今夜こそこう思っても、そうすることさえできなかったのです」

良人の淋しそうな顔を見ると、自分も胸を裂かれるように、淋しく悲しかった。自分は良人が愛して呉れる以上に、良人を愛していた。身を焼くほど激しく、深く、良人を愛していた。しかしそれを伝えることができない。そぶりにも色にも、あらわすことができないのである。生れつきとはいえ、このように頑な性分を、どんなに自分は呪い憎んだことだろう。杉乃はこう云って、両手でかたく顔を掩った。

「――夢のようだ」

孝之助は殆んど茫然と云った。

「私にはまるで夢のようだ」

杉乃の肩が波をうち、掩った手のあいだから声がもれた。どんなに激しい感情を抑えているのか、声は哀れにもつれ、喉に詰り、苦痛に耐えぬかのように、半身がいたましく捻れた。……孝之助は眼をつむって、両の拳を強く握りながら、妻の泣く声を聞いていた。そして、その泣き声がしずまるのを待って、云った。

「よくわかった。有難う杉乃」

杉乃は袂で顔を拭き、それから畳に手をついて黙って頭を垂れた。やはり口ではどう云いようもないらしい、罪を乞うようにじっと頭を垂れてから、泣き腫らした眼をあげた。