Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
そう云えば先刻の妻の大袈裟な心配の仕方は、少し常識を外れているようにあの時は感じたが、やはり肉身の間柄で虫が知らしたのではなかったであろうか。―――今から一箇月前、先月の五日に「雪」を舞った時の妙子の姿が、異様な懐しさとあでやかさを以て脳裡に浮かんだ。あの日彼女を中心にして家族が写真を撮ったこと、あの時も妻が何と云う理由もなく涙ぐんだこと、などが一つ一つ回想された。それにしても、事に依ると今頃はあの建物の屋根にでも上って助けを呼んでいる最中かも知れないのに、つい目と鼻の距離まで来ていながら何とかならないものであろうか。自分は此処にいつ迄こうしていなければならないのか。此処まで来てしまったからには、少々の危険は冒しても、何とかして彼女を連れて帰らなければ妻に申訳がないような気がする。………その時の妻の感謝に満ちた顔と、さっきのあの絶望的な泣き顔とが、かわるがわる眼の前にちらついた。
が、彼がそんなことを考えながら一心に外を見守っていた間に、はっと胸を躍らせるようなことが起っていた。と云うのは、いつの間にか線路の南側の方の水が減って行って、ところどころ砂が露われて来たのである。