Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
その日あたりからして、吉弥へ口のかかって来ることがなくなって来たのだ。狭いところだから、すぐ評判になったのであろう。妻を海岸へ案内しようと思ったが、それも吉弥が引き受けたのでまかしてしまった。
僕の東京の住家は芝区明船町だ。そこへ着いたのは夜の十時過ぎ――車を帰して、締っている戸をたたいていると、家の前を通り過ぎた人が一人あって、それが跡もどりをして来て、
「義雄かい?」僕の父であった。
「ただいま帰りました」と、僕はあわてて、少しきまりが悪く答えた。きょうは帰っただろうと、それとなく、わざわざ見まわりに来たところなのだろうから、父も随分心配しているのかと、僕のからだが縮みあがった。が、「まア、おはいんなさい」と、戸が明くのを待って、僕は父を座敷へ通した。
妻が残して行った二人の子供のいびきが、隣りの室から聴えている。
僕が茶を命じたら、
「今、火を起しますから」と、妻の母は答えた。
「もう、茶はいりませんよ、お婆アさん」と言っておいて、父は僕に対してすこぶる厳格な態度になり、
「今度のことはどうしたと言うんだ?」
「………」僕は少し心を落ち着けてから、父の顔を見い見い答えた。