Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
いて、いずれもその裏側を此方へ向けている。夏にならない中は一向気が付かずにいたが、この頃の暑さにいずこの家も窓と云わず、勝手の戸口と云わず、いささかでも風の這入りそうな処は皆明けられるだけ明け放ってしまったので、夜になって燈火がつくと障子に映る島田の影位の事ではない。芸者が両肌抜いで化粧している処や、お客が騒いでいる有様までが、垣根や板塀を越し或は植込の枝の間を透して円見得に見通される。慶三は或晩そよとの風さえない暑さに二階の電気を消して表の縁側は勿論裏の下地窓をも明放ちお千代と蚊帳の中に寝ていた時、隣の家――それは幾代という待合になっている二階座敷の話声が手に取るように聞えて来るのに、ふと耳を傾けた。両方の家の狭間へ通う風が何とも云えないほど涼しいので隣の二階でも裏窓の障子を明け放っているに違いない。喃々として続く話声の中に突然、
「あなた、それじゃ屹度よくって。屹度買って頂戴よ。約束したのよ。」という女の声が一際強くはっきり聞えて、それを快諾したらしい男の声とつづいて如何にも嬉しそうな二人の笑声がした。お千代も先刻から聞くともなしに耳をすましていたと見え、突然慶三の横腹を軽く突いて、