Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
病人のように髪も乱し浴衣の裾や胸をも乱して細帯をも解けたら解けたまんまで、居汚なくごろごろと寝そべっている様子が、通りすがりに覗きながら歩いて行く慶三の眼には、夜になって綺麗に化粧をして帯をきちんと〆めてしまった姿よりも遥に心を迷わすように見えた。突然慶三はいつも言語同断な程寝ぞうの悪いお千代は一体この暑い日中、今頃はどんな態をして昼寝しているだろうかと思付くと、もう駈出さずには居られない程気がせいて来る。道端の小石を蹴飛ばし勢よくがらりと妾宅の格子戸を明けたが、すると外からも見通される茶の間に洋服を着た見知らない若い男が胡座をかいていて、寝ていると思ったお千代は起きて話をしている。いつものように腰巻一ツの裸体のままで片肱を高く上げた脇の下をば頻と片手の団扇であおぎながら話をしているのであった。
慶三は意外の有様に片足土間へ踏み込んだまま立往生をしたが、お千代はさして驚いた様子もせず、「あら旦那。お暑かったでしょう。」と元気よく出迎えて、突と寄添った耳元に口を寄せ、「下谷の姐さん処の若旦那なのよ。構やしないのよ。」
手を引張られて、慶三は黙ってその儘二階へ上ると、お千代もその後について上ったなり、一向下へは行かず、老婢を呼上げて氷を取り寄せ、