Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
かくの如く慶三はわが妾宅の内のみならず、周囲一帯の夏の夜のありさまから、絶えず今まで覚えた事のない慾情の刺戟を受けるのであった。あまりに飽き疲れてしまって慶三は或日の午後今日ばかりは珍しく薄曇の涼しい空を幸い、久しく打捨てて置いた店の用事をたしに出たついで散髪屋へ立寄ると馴染の亭主が、
「旦那、大層お痩せになりましたな。今年の暑さには皆やられますよ。」
そう云われて、鏡にうつる自分の顔を見ると気のせいか少し頬がこけたような気がしたので、聊か身体が心配になり、その日は不思議にも家へ帰って夜も早く寝てしまった。しかし翌日になるともう朝の中から何とも知れず身体中が薄淋しいような妙な心持がして、とても夕方までは待ちきれず午飯をすますと直に赫々たる日中の炎天をも恐れず外に飛出してしまった。
今まで毎日通うもののそれはいつも夕方からの事で、こんなに早く昼間の中から出掛けた事はなかった処から、神楽坂を上って例の横町へ曲ると、炎天の日の下に夜を生命の世界は今しも寂と物音なく静まり返っている最中で、遠くの方に羅宇屋の笛の音が聞えるばかり。人一人通らぬ有様に慶三は却って物珍らしく初めて通る横町のような気がすると共に、両側の芸者家の明け放った窓や勝手口から、簾やレースの間を透して、薄暗い家の中には暑さに弱り果てた女達がまるで