Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
それにつけていよいよ葉山が邪魔になるものの、今更どうする事も出来ないとすれば、この腹癒せには何か巧い口実を見付けて、手当の五十円を半分に引下げてさえしまえば、つまり二人で一人の女を抱えたという名義が立つ、それより外に気の済む方法はないと商売人だけに復讐の方法を全く金銭上の事に移してしまった。丁度その月も晦日近く、慶三は増々この事のみに心を費しながら、夜も十時頃今夜は宿り込むつもりで妾宅の格子戸を明けようとすると、家の中で何やら頻に高声に云い罵る男の声が聞える。慶三は耳を済ます間もなく、障子の音荒く立出る気色に周章てて物蔭にひそむと、がらりと格子戸を明けて外へ出たのはかの葉山である。慶三は前後を忘れ怒の発するがままに、「おい、君。」と後から声をかけた。葉山は既に慶三の顔を見知っていたものと見え、軒燈の光に振返って少時睨み合ったが、忽ち嘲るような調子で、
「君、用心したまえ。僕ばっかりじゃないぜ、あの女にゃまだいろんな男がついている。非常な淫婦だ。」
云い捨ててその儘逃げるがように見向きもせず表通の方へ行ってしまった。慶三は追掛けても行かれず、と云ってこの儘妾宅へも這入れず、横町の角に立往生して代る代るに葉山の姿の消去った彼方の町と我が妾宅の軒燈とを見比べるばかりであった。