Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
の如き場面であろう。けれども、それらの錦絵も芝居の書割も決して完全にこの珍らしい貴重なる東洋固有の風景を写しているとは思えない。
寒月の隈なく照り輝いた風のない静な晩、その蒼白い光と澄み渡る深い空の色とが、何というわけなく、われらの国土にノスタルジックな南方的情趣を帯びさせる夜、自分は公園の裏手なる池のほとりから、深い樹木に蔽われた丘の上に攀じ登って、二代将軍の墳墓に近い朱塗の橋を渡り、その辺の小高い処から、木の根に腰をかけて、目の下一面に、二代将軍の霊廟全体を見下した事がある。
底光りのする空を縫った老樹の梢には折々梟が啼いている。月の光は幾重にも重った霊廟の屋根を銀盤のように、その軒裏の彩色を不知火のように輝していた。屋根を越しては、廟の前なる平地が湖水の面のように何ともいえぬほど平かに静に見えた。二重にも三重にも建て廻らされた正方形なる玉垣の姿と、並んだ石燈籠の直立した形と左右に相対して立つ御手洗の石の柱の整列とは、いずれも幽暗なる月の光の中に、浮立つばかりその輪郭を鋭くさせていたので、もし誇張していえば、自分は凡て目に見る線のシンメトリイからは一所になって、或る音響が発するようにも思うのであった。