Japanische Klassiker mit Furigana
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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Lesen Sie 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.224 Zeichen · 269 Bildschirme
して見ると、「過ぎし日の事思出でて泣く、」といったりあるいは末節の、「われは此処彼処にさまよう落葉」といったのはやはり詩人の Jeux d'esprit(心の遊戯)であったのだ。しかし自分は無論己れを一世の大詩人に比して弁解しようというのではない。唯晩年には Sagesse の如き懺悔の詩を書いた人にも或時はかかる事実があったものかと不思議に感じた事を語るに過ぎぬのである。
私は毎年の暑中休暇を東京に送り馴れたその頃の事を回想して今に愉快でならぬのは七月八月の両月を大川端の水練場に送った事である。
自分は今日になっても大川の流のどの辺が最も浅くどの辺が最も深く、そして上汐下汐の潮流がどの辺において最も急激であるかを、もし質問する人でもあったら一々明細に説明する事の出来るのは皆当時の経験の賜物である。
午後に夕立を降して去った雷鳴の名残が遠く幽に聞えて、真白な大きな雲の峰の一面が夕日の反映に染められたまま見渡す水神の森の彼方に浮んでいるというような時分、試に吾妻橋の欄干に佇立み上汐に逆って河を下りて来る舟を見よ。舟は大概右岸の浅草に沿うてその艪を操っているであろう。