Japanische Klassiker mit Furigana
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きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
Lesen Sie 菊屋敷 (きくやしき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.620 Zeichen · 71 Bildschirme
そうねと笑いながら、志保は花を持って家へあがった。
今日は亡き父の忌日である。父の黒川一民は松本藩士で儒官を勤めていた。朱子に皇学を兼ねた独特の教授ぶりを以て知られ、藩の子弟のほかにかなり遠くからも教を受けに来る者があり、それらはみな、城下の南にあるこの栢村の別墅の塾で教えていた。……一民が死んだのは二年まえのことだった。不幸にも男子がなく、志保と、その妹の小松という娘二人だけだったし、一民の遺志もあって、家はそのまま絶えることになったが、藩主の特旨で、栢村の屋敷に添えて終生五人扶持を賜わり、志保には村塾を続けてゆくようにとの命がさがった。妹の小松は五年まえに他へ嫁していた、越後のくに高田藩士で、栢村の塾生だった園部晋吾という者に望まれてとついだのである。晋吾は塾生のなかでも秀才であり風貌もぬきんでていた。小松も幼ない頃から美しく、少し勝気ではあるが頭のよいむすめで、二人の結婚はずいぶん周囲から羨やまれたものであった。そして夫妻は祝言をあげるとすぐ高田へ去り、父の葬礼に帰ったときにはもう二歳になる男子をつれていた。……正直にいって、そのとき志保は初めて妹に妬みを感じた、ひじょうに激しい妬みといってもよいだろう。