Japanische Klassiker mit Furigana
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きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
Lesen Sie 菊屋敷 (きくやしき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.620 Zeichen · 71 Bildschirme
三年めの冬にかかり、初めての雪がちらちらと舞いはじめた日の午後に、とつぜん園部夫妻が帰って来た。そのとき志保は家塾のほうで、村の児女たちの手習をみていたが、――夫妻が帰った、とお萱から聞くなり、
「子供は、健二郎どのは」とうち返すように訊いた、「健二郎どのも一緒ですか」
「はいご一緒でございます」お萱には志保がなぜそんなことを訊くのかちょっとわからなかった、「……お可愛らしくまるまると肥えて、お丈夫そうに育っておいでなさいます、すぐおいであそばしますか」
「もう少しお稽古があります、済んだらすぐにゆきますから」
志保はおちつきをとり戻してそう答えた。健二郎が丈夫に育っているならよい、これでもう晋太郎を取り返される心配はない、つねづね頭のどこかに、棘の刺さっているような感じだったのが、さっぱりときれいに抜け去った、そういう気持だったのである。……児女たちの稽古を済ませて母屋へゆくと、夫妻は健二郎と晋太郎を前に坐らせ、なにか菓子のような物を出して与えているところだった。
「わたくしたち明朝おいとましますのよ」挨拶が終るとすぐ小松が云った、「……園部がこんど伊勢の藤堂家へお召抱えになりましたの、それも江戸詰めで、まっすぐ下らなければならなかったのですが、いちどお逢い申さなければと思ってお寄り致したのですわ、どうぞなに