Japanische Klassiker mit Furigana
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きくやしき
菊屋敷
山本 周五郎
Lesen Sie 菊屋敷 (きくやしき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.620 Zeichen · 71 Bildschirme
よくそこに気がおつきでした。母さまもうれしゅうございますよ」
「本当は……こっちにいたいんですけれどねえ、お母さまだって寂しくなるし、それに……」
「いいえ母さまは寂しくはありません、たとえ寂しくとも、あなたが人にすぐれた武士になって下されば満足です、ただ江戸へいったら、いまの気持を崩さないように、しっかりと心をひきしめて勉強して下さい、まえにもたびたび申上げたように、さむらいというものは……」
云いかけて志保はぴたっと口を噤んだ、襖を明けてお萱が顔をだしたのだ、「どうぞお玄関まで……」と囁やくように云う、なにごとかしらんお萱の顔は紙のように白かった、志保は再び座を立った。……玄関へいってみると、常には見慣れない武士が三人立っていた。一人は以前この塾へも通って来たことのある者で、五浦なにがしとかいい、そののち目附役になったとか聞いた。
「失礼いたします」五浦なにがしが軽く会釈をして云った、「……塾のほうへ家中の者が集っている筈ですが、何人ほどおりましょうか」
「よくは存じませんが、たしかお十人ほどではなかったでしょうか」
「……十人、そうですか」
かれは伴れの二人にふり返り、なにかすばやく囁やき交わしたのち、しずかに前へ進み出て云った。