Japanische Klassiker mit Furigana
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
Lesen Sie 菜穂子 (なおこ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.758 Zeichen · 173 Bildschirme
「急に何処というあてもない冬の旅がしたくなったのです。」
菜穂子はそれを聞くと、急に一種のにが笑いに近いものを浮べた。それは少女の頃からの彼女の癖で、いつも相手の明なんぞのうちに少年特有な夢みるような態度や言葉が現われると、彼女はそう云う相手を好んでそれで揶揄したものだった。
菜穂子はいまも自分がそんな少女の頃に癖になっていたような表情をひとりでに浮べている事に気がつくと、いつの間にか自分のうちにも昔の自分がよみ返って来たような、妙に弾んだ気持ちを覚えた。が、それもほんの一瞬で、明が又さっきのように烈しく咳き込み出したので、彼女は思わず眉をひそめた。
「こんなに咳ばかりしていて此の人はまあ何んで無茶なんだろう、そんな為なくとも好い旅に出て来るなんて……」菜穂子は他人事ながらそんな事も思った。
それから彼女は再び元の冷やかな目つきになりながら云った。「お風邪でも引いていらっしゃるんじゃない? それなのに、こんな寒い日に旅行なんぞなすってよろしいの?」
「大丈夫です。」明は何か上の空で返事をするような調子で返事をした。「ちょっと喉をやられているだけですから。