Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なおこ

菜穂子

堀 辰雄

Lesen Sie 菜穂子 (なおこ) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.758 Zeichen · 173 Bildschirme

Aozora Bunko

一

……

菜穂子

一

「やっぱり菜穂子さんだ。」思わず都築明は立ち止りながら、ふり返った。

すれちがうまでは菜穂子さんのようでもあり、そうでないようにも思えたりして、彼は考えていたが、すれちがったとき急にもうどうしても菜穂子さんだという気がした。

明は暫く目まぐるしい往来の中に立ち止った儘、もうかなり行き過ぎてしまった白い毛の外套を着た一人の女とその連れの夫らしい姿を見送っていた。そのうちに突然、その女の方でも、今すれちがったのは誰だか知った人のようだったと漸っと気づいたかのように、彼の方をふり向いたようだった。夫も、それに釣られたように、こっちをちょいとふり向いた。その途端、通行人の一人が明に肩をぶつけ、空けたように佇んでいた背の高い彼を思わずよろめかした。

明がそれから漸っと立ち直ったときは、もうさっきの二人は人込みの中に姿を消していた。

何年ぶりかで見た菜穂子は、何か目に立って憔悴していた。白い毛の外套に身を包んで、並んで歩いている彼女よりも背の低い夫には無頓著そうに、考え事でもしているように、真直を見たままで足早に歩いていた。一度夫が何か彼女に話しかけたようだったが、それは彼女にちらりと蔑むような頬笑みを浮べさせただけだった。