Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
で、昼はまずどうやらこうやら過ごしていくが、夜が実につらい。出ぬ乳をあてがって、畳の足に引っかかる一間の中をあっちこっちと動物園の虎(とら)のようにして揺(ゆす)って歩くが、どうしても泣きやまぬ時などは、いっそ放り出してしまおうかと思うほどだ。
産褥(さんじょく)を早く離れた結果と、営養の不足と、精神の過労とで、今までついぞ病んだことのないお作も、はげしい頭痛と眩惑とを感じて、路を歩いてもおりおり倒れそうになることがある。ある日などは、やむなく終日を一室に倒れていたことなどもあった。だから、労働して食を得ようなどとは思いも寄らぬ。飢餓と病と心労と――お作はいよいよ苦境に陥った。
一月ほど経(た)ったある日の午後であった。
お作は起き上がった――室は暗く汚(きたな)い。一隅に小さい葛籠(つづら)、その傍に近所の人の情けで拵(こしら)えた蒲団(ふとん)に赤児(あかご)がつぎはぎの着物を着て寝ていて、その向こうに一箇の囲炉裏(いろり)、黒い竹の自在鍵(じざいかぎ)に黒猫(くろねこ)のようになった土瓶(どびん)がかかっていて、そばに粥(かゆ)を炊く土鍋(どなべ)が置かれてあるが、幾日にもそれを炊いた跡が見えない。