Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
最初は宮城前の広場を進駐軍の兵隊が駈け足をしている写真が映り、それが海岸の風景に変ったとき、私が煙草を喫うために下を向いて、マッチに火をつけようとすると、横にいた女房が、
「あっ、丹羽さん」
と早口にいった。慌てて顔をあげた私の眼に、大きな建築の入口の階段らしいところを急ぎ足におりてゆく着物を着た男のうしろ姿が映った。動きが早すぎるので、それが丹羽文雄君だというかんじはしなかったが、画面が変ると、こんどは広い屋敷の庭先きがうつり、スプリングコートを着て帽子をかぶった男の姿が、私の視野をかすめたと見るまに、こんどは広い縁側を前にして机の前に坐っている別の男の姿がうかびあがった。
その男が顔をあげると火野葦平君である。そこへ庭先きから入ってきた男が、縁側に腰をおろし、急いで帽子をとった。それが、自分であると気がついたのはスクリーンの人物の幻像が消え去ってからである。とたんに、トーキーの声が追いかけるようにひびいてきた。「かつて、はなやかなりし彼等も今や追われる身の上となったのであります」
私は暗い観覧席で苦笑いをうかべた。その晩から女房の容態が変ってきた。