Japanische Klassiker mit Furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
親馬鹿入堂
親馬鹿入堂
このような境遇と環境の中にあって私の親馬鹿が徐々に、そして確実な経験と径路を辿って完成されていったことは、もはや説明の必要もあるまい。
俵士はいつのまにか二つになり、三つになり、四つになった。四つになる頃には、やっと父親の存在を意識してきたらしく、ある晩、東京から久しぶりで訪ねてきた友人と街で飲みあかし、あくる朝、帰ってくると、すぐ胃が痛みだし、嘔気を催したので、女房に古新聞と洗面器を持って来させ、畳の上に腹這いになったまま、苦しまぎれに、げいげいやっていると、肩のあたりに、やわらかい感触をおぼえ、ふわりとした弾力体がぐっとのしかかってきた。
「お父ちゃん」
と、耳元でささやく舌足らずの声が、かぼそく私の脳天に沁みとおってきたのである。
「俵的ですよ、俵的が来ましたよ」
いつもは、俵的と呼ばれることをいやがる上に、母親以外の誰れの手にも抱かれようとしなかったやつが、ひと晩、うちをあけたので、すっかり不機嫌になっている母親の代りに父親の肩によりすがろうとする大人びた仕草が、よしんばそのときかぎりの偶然の思いつきであったとしても、私の心には犇々と迫るものがあった。