Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme
「そういう気持とは、どういうことだ」
「この養生所におちついて下さるというお気持ですわ」お雪は勇敢に云った、「あたしなんかが云うのはおかしいでしょうけれど、ここにはいいお医者さまが必要ですし、本当に医者らしいお医者なら、ここでお仕事をなさる気にならない筈はありませんもの、そうでしょう」
登はそのとき気がついた。
――森半太夫の口まねだ。
お雪が半太夫を恋しているということは、津川玄三に聞き、また狂女おゆみに付添っているお杉からも聞いた。半太夫は無関心らしいが、お雪は夢中になっているという。森さんのお堅いのは立派だけれど、お雪さんの気持を考えると憎らしくなる、とお杉は云った。登自身もときどき、二人で話しているようなところを見たことがある。通りかかった半太夫をお雪が呼びとめて、ちょっと立ち話をするといった程度であるが、いつかいちど、薬園の柵のところで、お雪が泣いているのを見かけたことがあった。――晩春の黄昏だったと思う。半太夫は腕組みをし、棒のように立って空を見あげており、その脇でお雪が、袂で顔を掩って泣いていた。かなりはなれていたうえに、登はすぐ眼をそむけて去ったが、うすく靄のかかった、片明りの光の中で、二人の姿は影絵でも見るような、非現実的なものかなしさを感じさせたものだ。