Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme
五
「その子、――」と佐八はしゃがれた声で呻いた、「いけない、その子はいけない、この子を見せないでくれ、その子をそっちへやってくれ、そっちへ」
佐八は固く眼をつむって喘いだ。
そのとき裏の空地のほうで、けたたましい叫び声と、狂ったように犬の吠えたてるのが聞えた。このあいだに雷は去り、雨もあがっていて、裏の叫び声の中に「骸骨だ」と云う言葉が、はっきりと聞えた。
治兵衛はそっと立ちあがった。
五
保本登は黄昏がたまで佐八の側にいた。
差配の治兵衛は裏の騒ぎを聞いて、ちょっと見て来る、と云って出ていったまま、一刻ちかくも戻って来なかった。病人はすっかりおちついたようすで、半ば口をあけたままよく眠っているし、登はひどく腹がへってきたので、帰るためにそっと立ちあがった。すると、そこへ治兵衛が戻って来た。
「どうも済みません」と治兵衛は手拭で額を拭きながらあがって来た、「裏の地均しをしているところで、人足たちがいやな物を掘り出したもんですから」
「私は帰る」と登が声をひそめて云った、「病人はよく眠っているし、急変のおそれもないようだ、眼をさましたら薬をのませて、重湯の濃いのをやってくれ」