Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
黒縮緬へ三つ柏の紋をつけた意気な芸者がすれ違うときに、高柳君の方に一瞥の秋波を送った。高柳君は鉛を背負ったような重い心持ちになる。
石段を三十六おりる。電車がごうっごうっと通る。岩崎の塀が冷酷に聳えている。あの塀へ頭をぶつけて壊してやろうかと思う。時雨はいつか休んで電車の停留所に五六人待っている。背の高い黒紋付が蝙蝠傘を畳んで空を仰いでいた。
「先生」と一人坊っちの高柳君は呼びかけた。
「やあ妙な所で逢いましたね。散歩かね」
「ええ」と高柳君は答えた。
「天気のわるいのによく散歩するですね。――岩崎の塀を三度周るといい散歩になる。ハハハハ」
高柳君はちょっといい心持ちになった。
「先生は?」
「僕ですか、僕はなかなか散歩する暇なんかないです。不相変多忙でね。今日はちょっと上野の図書館まで調べ物に行ったです」
高柳君は道也先生に逢うと何だか元気が出る。一人坊っちでありながら、こう平気にしている先生が現在世のなかにあると思うと、多少は心丈夫になると見える。
「先生もう少し散歩をなさいませんか」
「そう、少しなら、してもいい。どっちの方へ。上野はもうよそう。今通って来たばかりだから」