Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.022 Zeichen · 36 Bildschirme
目鼻立ちのきっぱりした瓜実顔。縮緬の着物に紫繻子の帯を立矢の字に締め、島田に白い丈長をかけ、裾をきりりと短く端折って白の脚絆に草鞋を穿いている。
「これは大したもんだ。甲府じゃこんな鼻筋の通った女に、お目にかかったことがなかった。……齢はまだ二十歳になったぐらいのところだが、崖に吊りさげられながらあんな悪態をつくなんてえのは、この齢の小娘にはちょっと出来ない芸当だ。……波切りの観音さまのようなおっとりした顔をしているくせに、よくまあ、あんな憎まれ口がきけたものだ、これだから女はおっかねえ。……しかし、いつまでもこうしておくわけにはゆくまい、どれ、水を吐かせてやるか」
吸殻を叩いて煙草入れを袂へ落すと、やっこらさと起ちあがり、まるでごんどう鯨でも扱うように襟を掴んでズルズルと磧へ引きあげる。衿をおしあけて胸のほうへ手を差し入れ、
「おう、まだ温みがある。このぶんなら大丈夫。……落ちる途中で気を失ったとみえて、いいあんばいにあまり水も飲んでいない」
がんじがらめになっている繩を手早く解いて俯向けにして水を吐かせ、磧の枯枝や葭を集めて焚火を焚き、いろいろやっているうちに、どうやら気がついたらしく微かに手足を動かし始めた。