Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖 (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.957 Zeichen · 114 Bildschirme
船もなかなか難儀なものだ。ひどく酔う者は血まで吐く。硫黄か懐中付木をふところにして乗ると船に酔わないというが、ひどく船酔いした時には、半夏陳皮茯苓の三味を合せて呑ませるさ、だが、そんな物のない場合が多いから、しかる時には、童子の便をのますとたちまち効果がある。きたないというなかれ、血を吐くよりはましではないか、もし童子便なき時は、大人の尿を呑ますべし――と鹿つめらしく講義をしたが、これは、阿波へ行こうという考えの万吉とお綱に、参考とまではならなくとも、ちょっと耳をひかれた話。
なお、田螺を妙りつけて旅先で用うれば水あたりのうれいがない。笠の下へ桃の葉をしいてかぶれば日射病にかからない。足の土踏まずが熱して腫れ痛む時にはみみずを泥のまま摺りつぶして塗ること秘方の一つ。苦参という草を床の下へ敷いて寝るか、枳の葉を抱いて寝ると蚤よけになるということにまで源内談義が及びかけた時――不意に、今までヒッソリしていた隣り座敷で、
「だ、だッてお前、どの顔さげて、阿波へ帰れるものじゃない……」
声をたかぶらせていう者がある。
シク、シクと嗚咽する様子が女であった、連れとみえて慰めている。