Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme

Aozora Bunko

その瞬間、あらゆるものが静止したように思われた。

ついに、黒死館事件の循環論の一隅が破られ、その鎖の輪の中で、法水の手がファウスト博士の心臓を握りしめてしまった――ああ閉幕。

それがちょうど六時のことで、戸外にはいつしか煙のような雨が降りはじめていた。その夜黒死館には、年一回の公開演奏会が催されていて、毎年の例によれば、約二十人ほど音楽関係者が招待されることになっていた。会場はいつもの礼拝堂で、特にその夜に限り、臨時に設備された大装飾灯が天井に輝いているので、いつか見た、微かにゆらぐ灯の中から、読経や風琴の音でも響いてきそうな――あの幽玄な雰囲気は、その夜どこへかけし飛んでしまったかのように思われた。

けれども、その扇形をした穹窿の下には、依然中世的好尚が失われていなかった。楽人はことごとく仮髪を附け、それに眼が覚るような、朱色の衣裳を着ているのである。法水一行が着いた時は、曲目の第二が始まっていて、クリヴォフ夫人の作曲に係わる、変ロ調の竪琴と絃楽三重奏が、ちょうど第二楽章に入ったばかりのところだった。竪琴は伸子が弾いていて、その技量が、幾分他の三人――すなわち、クリヴォフ、セレナ、旗太郎に劣るところは、云わば瑕瑾と云えば瑕瑾だったろうけれども、しかし、それを吟味する余裕もないのだった。