Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
三、父よ、吾も人の子なり
三、父よ、吾も人の子なり
昨年問題の遺言書が発表された――その席上からいち早く出て、算哲がそこへ達しない以前に、金庫の中から、焼き捨てられた全文を映し取った乾板を、取り出した人物がなければならなかった。そうであるからして、その人物の名を印した伸子の封書を握りしめて、法水が、心の中でそう叫んだのも当然であると云えよう。しかし、封を切って、内容を一瞥した瞬間に、どうしたことか彼の瞳から輝きが失せ、全身の怒張がいっせいに弛んでしまって、その紙片を力なげに卓上へ抛り出した。検事が吃驚して覗き込んでみると、それには人の名はなく、次の一句が記されているのみだった。
――昔ツーレ(一)に聴耳筒(二)ありき。
注(一)ツーレ――。ゲーテの「ファウスト」の中で、グレートヘンが唄う民謡の最初の出。その時ファウストから指環を与えられたのが開緒となって、彼女の悲運が始まるのである。
(二)聴耳筒――。西班牙宗教審問所に設けられたのが最初。ウファ映画「会議が踊る」の中で、メテルニッヒがウエリントンの会話などを盗み聴くあれがそうである。
「なるほど、聴耳筒か――。その恐ろしさを知っているのは、独り伸子のみならずさ」