Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
すると、伸子がまず、夢に魘されたような声で叫び立てた。
「あのファウスト博士は、まだまだ私を苦しめ足りないのですわ。最初地精の札を、私の机の中に入れて置いたばかりではございません。今日も、あの悪魔はまた私を択んで、人身御供の三人の中に加えるんですもの」と背後に廻した両手で、竪琴の枠を固く握りしめ、それを激しく揺ぶった。「ねえ、法水さん、貴方は、クリヴォフ様が演奏壇のどこで刺されたか、また、どっちの側から転げ落ちたか――お知りになりたいのでしょう。けれども、ほんとうに私、何も知らないのです。ただ竪琴の枠を掴んで、凝然と息を詰めていたのでございますから、ねえ旗太郎様、セレナ様、貴方がたは、たぶんそれを御存じでいらっしゃいましょう」
「いいえ、私がもしグイディオン(ドルイド呪教に現われた、暗視隠形に通じていたと云われる、大神秘僧)でしたら、あるいは知っていたかもしれませんわ」とセレナ夫人は、戦きの中に微かな皮肉を泛べた。すると、それに言葉を添えて、旗太郎が法水に云った。
「事実そうなんです。生憎僕等には、昆虫や盲者が持ち合わせているほど、空間に対する感覚が正確でないのですよ。