Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
た。その中に光と云えば、聖壇に揺れている微かな灯のみで、それが、全体の空間をなおいっそう小さく思わせた。そこから暗く生暖い、まるで何かの胎内ででもあるかのような――それでいて、妙に赭みを帯びた闇が始まっていた。おまけに、その絶えずはためいている金色の輪には、見詰めていると眼を痛めるような熾烈な感覚があって、あたかもそれが、法水の酷烈をきわめた熱意と力――成敗をこの一挙に決し、ファウスト博士の頭上に、地獄の礎石円柱を震い動かさんばかりの刑罰――を下そうとする、それのごとくに思われるのだった。やがて、六人は円卓を囲んで座に着いた。その夜の旗太郎は、平常なら身ごなしに浮き身をやつす彼には珍しく、天鵞絨の短衣のみを着ていて、絶えず伏眼になったまま、その薄気味悪いほどの光のある、白い手を弄んでいた。その側に、伸子の小さい甲斐甲斐しい手が――その乾杏のように、健康そうな艶やかさが、いとも可愛らしげに照り映えているのである。しかし、セレナ夫人を見ると、相変らず恋の楯にでも見るような、いかにも紋章的な貴婦人だった。けれども、その箍骨張りの腰衣に美斑とでも云いたい古典的な美しさの蔭には、やはり、脈搏の遅い饒舌を忌み嫌うような、静寂主義者らしい静けさがあった。