Japanische Klassiker mit Furigana
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あなたもわたしも
あなたも私も
久生 十蘭
Lesen Sie あなたも私も (あなたもわたしも) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.405 Zeichen · 263 Bildschirme
サト子は、椅子から立ちながら、
「失礼しても、いいかしら?……愛一郎さんに、お話ししたいことがあるんです」
秋川は、湿っぽい声でこたえた。
「あなたさまは、おやさしくっていらっしゃる」
客間のつづきから庭へおりて、ガラスの囲いのある四阿の近くまで行くと、愛一郎がぼんやりと籐椅子に掛けているのが、茂りあったポインセチアの葉の間から見えた。
しゃれた鋳金の把手をまわして四阿のなかにはいると、愛一郎は、もの憂い目の色で、こちらへ振り返った。サト子は椅子に掛けながら、いきなりに切りだした。
「聞きたいことがあるのよ……泳いで行って、声をかけたとき、あなた、あのなかにいたんでしょう。なぜ、返事してくれなかったの?」
「ぼく、気が変になって、あそこで死ぬつもりだったんです」
そう言いながら、サト子の顔を見返した。びっくりするような美しい目の色だった。
「満潮になるのを待っているうちに、どんどん潮がひいて、夜があけるころには、いちばん低い岩まで出てしまいました」
サト子は、遠慮のない声で笑った。
「よかったわね」
「お礼をいいたいと思って、お寝間の窓の下に、しばらく立っていましたが……」